熱弾性


私は、以下の二つの理由から、マントル鉱物の高温高圧下での熱弾性の研究が重要であると思っています。

1.

地球内部構造を観測する最も有力な手法は、もちろん地震学です。地震学では地球内部の弾性的性質を得ることは出来ますが、それから地球内部の物質構成・温度分布などの情報を得るためには、地球内部を構成するであろうと考えられる物質の弾性的性質に関する知識が不可欠です。弾性は温度と圧力の関数であり、且つそれらは非線形ですので、マントルとして現実的な温度圧力条件での弾性定数の測定が重要であると考えています。

2.

地球内部では、熱は主に対流によって運ばれていると考えられています。そのため、地球内部の温度勾配は、断熱的かそれに近いものと考えられています。断熱温度勾配(dT/dz)sは、地球内部では

(dT/dz)s = αgT/Cp

と表されます。ここに、Tは温度、zは深さ、αは熱膨張率、gは重力加速度、Cpは定圧比熱です。固体の低圧比熱は、高温では余り変化しない量であり、重 力加速度もマントルではほぼ一定ですから、断熱温度勾配を見積もる上で最も重要な物理量は、熱膨張率であると考えられます。鉱物の熱膨張は、温度上昇と共に増加し、圧力上昇と共に減少します。従って、マントルの断熱温度勾配を求めるには、マントル構成鉱物に対し、現実的な温度圧力条件下で熱膨張率が必要です。