電気伝導度


電気伝導度は、地震波速度と並んで、地表から見積もることが出来る数少ない地球物理学的な量です。そのため、地球内部物質、特にカンラン石の電気伝導度の研究が数多くあります。カンラン石の電気伝導メカニズムには、1) Fe2+とFe3+の間の電子空孔(h)のホッピング、2) Mgサイトの空孔VMg"によるイオン伝導、3)プロトンHの移動(プロトン伝導)の3種類が重要であると考えられています[Yoshino & Katsura, 2013]。この中で、電子空孔のホッピング伝導が最も基本的ですが、マントルの電気伝導度の観測結果は、カンラン石の電子空孔ホッピング伝導よりも高いものが多いので、他のメカニズムを考慮する必要があります。マントルの岩石の電気伝導度を論じる場合、鉱物の伝導以外に、微量のH2OやCO2による微量の液体相が重要であると指摘されています[例えばSifre et al., 2014]。

カンラン石のh·ホッピング伝導とVMg”イオン伝導の研究は1990年代まで盛んに行われていましたが、この10年はプロトン伝導に注目が集まっています。しかし、これまでのプロトン伝導の測定結果を比較検討したGardes et al. [2014]によると、プロトン伝導ではマントルの電気伝導度を説明できないと結論付けています。逆にSifre et al. [2014]はH2OやCO2による微量の液体相で高電気伝導度が説明できると結論しています。

私たちの研究グループではマントル構成鉱物の電気伝導度を調べてきました。私たちの測定結果はとりわけ低いプロトン伝導の値を示しており、マントルの高電気伝導度は微量の部分融解で説明するべきであると考えています。しかし、プロトン伝導か部分融解による伝導かを議論する前に、信頼性の高いVMg"イオン伝導の測定が行われていないことに気がつきました。無水のカンラン石の電気伝導度モデルとしては、SO2 [Constable et al., 1992]とSEO3 [Constable, 2006]の二つがあり、高温の酸化的マントルではSEO3が高い値を提示します。従って、プロトン伝導を重要視する研究者はSO2を用い、そうでない研究者はSEO3を用いると言う状況になっています。この理由から、私たちは信頼性高いVMg"イオン伝導の測定が急務であると考えています。


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